それぞれの想い・木乃香編
ザァァァァァァ・・・・水の流れる音がする・・・
「せっちゃん!!・・・ぷはっ!・・・助けて・・・」
ウチはせっちゃんに助けを求めた。
「・・・この・・・ん・・・こ・・・ちゃ・・・」
かすかにウチを呼ぶ声が聞こえた・・・
ザバァン!高い波ウチの体を覆いかぶさるように包みこんだ・・・
水の中からせっちゃんが飛び込んできたのが見えた・・・
しかし、ウチの体が簡単に流されてせっちゃんから離れていった・・・
薄れる記憶の中、ウチとせっちゃんは大人の人に助けられたのを覚えている・・・
・・・・・
・・・
・
「!!!」
ウチは目を覚ました。体には汗をかいていた。
「・・・・・」
いつも見ている夢だったが、今日は鮮明にでてきた。
なぜ今かは理由はわからなかった。
「・・・・・ふぅ」
ウチはあれ以来せっっちゃんとは会っていない。
ウチの初めての友達・・・
もう会うことはないんだろうか?会ってまた楽しく話がしたい・・・
そんなことを思いながら、したくを始めた。
今日は麻帆良学園の入学式だからだ。
「・・・・・」
こんな夢を見たからもしかしたら・・・
ウチはそんなことを期待していた。
入学式の時、ウチはせっちゃんを探していた。
どこにもいない・・・当たり前だと思った。
そんな偶然があるわけがないと・・・
「どうしたの?このか?」
「なんでもあらへんよ、アスナ」
ウチは同じ部屋のアスナとすぐに仲良くなった。
話しやすくて元気があっていい人だ。
アスナと話をしていて一人の人と目が合った。
あの顔は間違いなくせっちゃんだった。
あの目、あの髪、あの顔、昔と同じだった。
しかし、せっちゃんはすぐに目をそらしてしまった・・・
ウチのこと覚えてないのかと思った・・・
「このか?聞いてる?」
「え?ゴメン何の話やっけ?」
ウチがアスナと話を始めてまたせっちゃんの方を見るとそこにはもういなかった。
式が終わってからせっちゃんを探した、話をしたかったからだ。
そんな時せっちゃんの後ろ姿を見つけた。
「せっちゃん!」
ウチがそういうとすぐに後ろを振り向いてくれた。
「やっぱりせっちゃんや〜久しぶり♪元気やった?あれからあえへんから心配しってたんよ?」
懐かしくて嬉しかった。あれからどうしていたのか、今まで何をしていたのかいろいろと聞きたかった。
「お久しぶりです、お嬢様」
そっけない返事だった。昔みたいな口調ではなく・・・寂しい口調だった・・・
「え〜?なんでお嬢様なんてゆうん?前はこのちゃんってゆうてくれたやん?このちゃんてゆうて〜?」
「いえ、私はそのような立場ではありませんので・・・」
立場?何でそんなことを気にするんだろう?
「でも昔はよく言ってくれたやん?このちゃんいうて?」
「そんなに慣れなれしくすることはできません。私はこれから行く所があるので失礼します」
「あ、せっちゃん待って・・・」
そう言ってせっちゃんは軽くお辞儀をしてその場を立ち去った・・・
ショックだった、会いたいと思っていたのはウチだけだったのか?
もしかして嫌われてる?そう思った・・・
昔と何かが違っていた・・・
あの時以来あっていない、あの時から嫌らわれたのだろうか?
いろいろな考えが頭をよぎった・・・
その日の私の枕は濡れていた・・・
「・・・このかどうしたの?」
「ん?別に〜?なんでもあらへんよ?」
「別にって・・・そんなに息きらしてるのに何でもないの?」
あれ以来せっちゃんの姿を見つけて後を追うとすぐにいなくなってしまう。
走ったが、またいなくなってしまった後であった。
明らかに避けられているそう思った。
「このか〜行くよ〜?」
「あ、今行く!」
私はその場を立ち去った途中で龍宮さんが一人で木に向かって話しているのが見えた。
「アスナ〜こっち〜」
ウチはアスナに相談事があったから屋上で食べようと誘った。
「風がふいていて気持ちいいね〜」
アスナはいつもどうりに元気で笑っていた。
「たまにはこんな所で食べるのもええやろ?」
ウチは笑っていただろうか?
「な〜アスナ?相談にのってくれへん?」
「ん?いいわよ何のこと?」
「あのな・・・」
ウチはせっちゃんとわからないように言葉を選んで話した。
「小さい頃に仲良かった人が久しぶりに会っても、また仲良くできると思う?」
「そりゃそうでしょ?ってこのかもしかして・・・」
「うん・・・ウチ何か仲良くなれんのよ・・・仲良うしたいのにうまくいかんて・・・」
「このか・・・」
アスナは顔を曇らせて聞いていた。
「なんか、避けられてるように思うし・・・やっぱ嫌われてるんやろか?」
ウチの目に涙が溜まっているような気がした。
「でも!嫌いになる理由がないでしょ!?思い過ごしだって!」
嫌いになる理由・・・いろいろ考えて見たが思い当たる事があった。
「でもな、昔ウチのせいで酷い目にあわせてしもうたし・・・ウチのせいで川に溺れさせてしまったんよ、あれからすぐにいなくなってしもうたから・・・多分そのせいで嫌われたんよ・・・」
ウチがあの時せっちゃんの言うことを聞いていればあんな事にはならなっかったのに・・・
「このか・・・本当に嫌われてるの?私が聞いてこようか?」
「ええよ、そんなことしたら余計嫌われてしまうし・・・けど、できたら前みたいに仲良うなりたいな・・・」
そのとき、ウチの目から涙がこぼれていた。アスナの目からも。
その日の放課後、部活で遅くなって帰ろうとしたとき声が聞こえた。
その声は確かにせっちゃんだった、ウチは直ぐにその声のするほうに向かった。
「お前には迷惑かけてないだろう!?これは私の問題だからほっといてくれ!」
初めて聞くせっちゃんの怒った声だった。
「お前が悩んでいて最近の仕事がおろそかになっていて迷惑だ。それにお前の問題じゃなくてお前たちの問題だろ?」
「いい加減に下らない事で悩むのは止めにしないか?それに・・・」
明らかに喧嘩をしていた、止めようと思ったその時、
「下らないことだと!?お嬢様の事は真剣な事だ!!!」
ウチのこと?そう思ったら体が止まった。
ウチのせいで喧嘩をしているのかと思った。
「いいや、下らないね!お前の馬鹿げた考えのおかげで二人して傷つけあってるからな!」
馬鹿げた考え?傷つけあう?ウチには意味がわからなかった。
「二人して仲良くなりたいのならお前が近衛さんにそう言えばすむ話だろう?」
「そんな簡単な話じゃない!ただ仲良くなるだけじゃ意味がないんだ!それだと前と同じになるだけだ!」
前と同じ?頭に浮かんだのはあの事だけだった。
「仲良くなって傷つけるなら・・・このままでいい!」
私は傷ついていない、そうせっちゃんに言いたかったが体が動かなかった。
「なんで傷つけるって決まってるんだ?守ってやればいいだろ!」
「無理だ!どんなに頑張ってもきっと傷つけてしまう!どんなに頑張っても仲良くできるはずがない!私は─」
何で無理なのか?何で仲良くなれないのか?ウチにはわからなかった・・・
ドンッ!
壁を叩く音が聞こえた。
「私には・・・無理なんだ・・・」
せっちゃんが何を言いたくて、考えているかはよくわからなかった。
けれども、ウチのことを嫌いになってないことがわかって嬉しかった。
そして、頬は涙で濡れていた。
あの日の会話の時からウチはせっちゃんに必要以上に会うのを止めた。
嫌らわれているわけでもなく、せっちゃんにも考えがあるからだと思ったからだ。
なら、今度せっちゃんと仲良くなった時のために自分にしかできない事をしようと思った。
いつか、せっちゃんが本当の事を話してくれる。
そんな事を思いながらウチは日々を過ごしている。
─本当のせっちゃんがわかることはもう少し先の話になるとはこの時のウチにはわからなかった
〜完〜
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